助産師という仕事は、新しい命の誕生に立ち会う尊い職業です。
その一方で、夜勤やオンコール、精神的負担、責任の重さ、人間関係などの要因から「辞めたい」と感じることも珍しくありません。
この記事では、助産師が辞めたいと感じる理由を徹底的に掘り下げ、実際に辞めた人の声やその後の進路、辞める前に検討すべきこと、辞め方までを網羅的に解説します。
読み進めることで、自分の状況を客観的に整理し、納得のいく選択をするための一助となることを目指しています。
助産師を辞めたい理由とは
助産師が辞めたいと感じる背景には、日々の業務に伴う身体的負担や精神的プレッシャー、職場内での人間関係の悩み、やりがいの喪失などが複雑に絡み合っています。
ここでは、その代表的な理由を具体的に掘り下げていきます。
夜勤やオンコールによる生活リズムの乱れ
助産師の多くは病院勤務で夜勤やオンコール対応を求められます。
これにより慢性的な睡眠不足に陥り、体調を崩す人も少なくありません。
生活サイクルが乱れることで、心身に負担が蓄積していきます。
また、家庭や育児との両立が困難になることも、辞めたいと感じる大きな要因です。
とくに育児中の助産師は、保育園の送り迎えや家事との両立に苦労し、職場に対して強いストレスを抱えることもあります。
生活サイクルが整わないことによる健康被害
夜勤が続くと、自律神経のバランスが乱れやすくなります。
結果として、頭痛や胃痛、不眠などの体調不良を訴える人が増えます。
体の不調が続くと、勤務へのモチベーションが低下し、離職を考えるきっかけにもなり得ます。
日常生活に支障をきたすようになる前に、自分の体調としっかり向き合うことが必要です。
家庭との両立の難しさ
助産師は不規則な勤務のため、パートナーや家族との生活リズムが合わないことが多くあります。
子育て世代の助産師は、夜勤や土日勤務によって家庭の時間が制限され、罪悪感やストレスを感じやすくなります。
このような生活を何年も続けていくうちに、「今の働き方では家庭との両立ができない」と感じ、辞めたいという思いが強まっていきます。
精神的ストレスと責任の重さ
助産師は母体と胎児、二人分の命を預かる責任ある仕事です。
出産は命がけの現場であり、常に緊張感を持って業務にあたる必要があります。
緊急対応や判断ミスの恐れなど、精神的な重圧は計り知れません。
加えて、患者からのクレームや、場合によっては医療訴訟に発展するケースもあり、そのリスクと隣り合わせで働くプレッシャーが日々のストレスとなって積み重なっていきます。
出産時の緊張と失敗できない重圧
出産は予期せぬ事態が起きやすく、一瞬の判断ミスが命に関わる可能性もあります。
助産師はその場で適切な判断を求められるため、常に強いプレッシャーにさらされています。
とくに初産やハイリスク分娩の対応時には、経験が浅いほど不安が大きくなります。
このような場面で「自分には向いていないかもしれない」と感じ、辞める決断をする人もいます。
医療訴訟への恐怖心
患者との信頼関係を築いても、万一のトラブルが発生した場合、クレームや訴訟リスクに発展することがあります。
助産師は業務範囲の判断が難しく、医師との指示の違いによってトラブルの責任を問われるケースもあります。
医療訴訟に巻き込まれた経験がある助産師は、再び現場に立つことに恐怖を感じるようになり、辞職を選ぶ人もいます。
精神的負担を背負い続けることは、メンタルヘルスにも深刻な影響を及ぼすのです。
人間関係や職場内での摩擦
助産師の職場は女性が多く、閉鎖的な空間になりやすい特徴があります。
そのため、人間関係のトラブルや陰口、派閥といった問題が発生しやすく、精神的ストレスの原因となります。
また、医師や看護師など他職種との連携で衝突が起きることも多く、職場の空気に疲れを感じる助産師は少なくありません。
女性中心特有の人間関係
上下関係が曖昧なまま慣習で続いている現場では、新人が排除されたり、ベテランの圧力が強く働いたりすることがあります。
同じ女性同士であっても、ライフステージや価値観の違いからすれ違いが生まれ、関係性が悪化することも珍しくありません。
職場環境によっては、こうした人間関係のストレスが業務以上に辞めたい理由の主因となることもあります。
多職種連携によるストレス
助産師は医師や看護師と協力して業務を進めるため、連携の中で立場や役割の違いが衝突を生むことがあります。
助産師として専門的な判断をしても、医師からの指示に従わなければならないケースもあり、ジレンマを抱えることになります。
また、看護師との業務の棲み分けが曖昧な現場では、責任の所在が不明確になりやすく、トラブルにつながる要因となります。
やりがいを感じられなくなった
助産師という仕事に憧れて就職しても、実際に現場で働く中でやりがいを見失ってしまう人もいます。
ルーティン業務が続き、達成感を感じられない、あるいは理想と現実のギャップに苦しむことが多いです。
また、近年では自然分娩よりも帝王切開が増え、分娩に立ち会う機会そのものが減っている職場もあります。
これにより、スキルの向上が感じられず「このままでいいのか」と悩む人もいます。
業務のルーティン化
お産に関わる件数が減ると、実務経験が蓄積されにくくなります。
日々の仕事が書類作成や検診準備、物品管理などになってしまい、志した助産師像との乖離に悩むこともあります。
これがモチベーションの低下につながり、辞めたいという感情に直結します。
勤務先別に見る助産師の辞めたい事情
助産師が勤務する場所によって、その職場特有の悩みや負担の大きさが異なります。
病院勤務・クリニック勤務・フリーランスといった勤務形態ごとに、辞めたいと感じる理由を見ていくと、それぞれの働き方の課題やリスクが浮かび上がります。
自分の働き方に合っていないことが、辞めたい気持ちを強めている可能性もあるため、ここで整理しておくことが重要です。
病院勤務の助産師
大病院では医師との連携や緊急分娩の対応が求められ、常に迅速な判断と行動が必要とされます。
また夜勤や当直が多く、身体的な負担がとくに大きくなります。
病床数の多い施設ほど業務量が多く、記録や会議などの事務作業も加わって長時間勤務になりがちです。
高度医療との関わりによるプレッシャー
NICUやハイリスク妊婦対応など、高度な医療体制が整った病院では、助産師にも専門知識とスキルが求められます。
医師との連携の中で、自分の判断が患者の命に関わる場面もあり、緊張感のある現場に疲弊してしまうケースもあります。
また、研修や勉強会など自己研鑽を求められる頻度も高く、精神的な余裕がなくなることも理由の一つです。
クリニック勤務の助産師
クリニックでは病院より少人数で業務を回しており、助産師の業務範囲が広がる傾向にあります。
受付や事務的な雑務も任されることがあり、本来の専門業務とのギャップに悩むこともあります。
また、院長との関係性が職場の雰囲気に直結するため、人間関係が働きやすさに大きな影響を与えます。
院長との人間関係がすべてに影響する
小規模なクリニックでは、院長の方針や性格が業務全体に及ぼす影響が大きく、合わないと感じた場合には逃げ場がありません。
パワハラや一方的な指示に悩まされるケースもあり、助産師としてのスキルを発揮できずに辞めたくなることもあります。
また、スタッフ間の人数が少ないため、人間関係の悪化が業務全体に及ぶリスクが高いのも特徴です。
フリーランス・訪問助産師
独立して活動するフリーランスや訪問型の助産師は、働き方の自由度がある一方で、安定した収入や制度の支援を受けにくい不安定さも抱えています。
また、万が一のトラブルに対処する際の責任も個人にのしかかるため、精神的負担も大きくなりやすいです。
収入の不安定さと将来設計の難しさ
依頼件数や訪問件数によって収入が大きく変動し、月によって生活に大きな差が出ることもあります。
雇用保険や厚生年金といった制度からも外れがちで、将来的な生活設計に不安を感じて辞めたいと考える人もいます。
個人事業主として経営的な視点も必要になり、本来の助産業務に専念できないと感じる場合もあるでしょう。
助産師を辞めた後の進路・働き方
助産師を辞めた後も、医療や福祉の現場で活かせるスキルや資格は多くあります。
看護師に戻る、教育現場で活躍する、福祉系職種に転身するなど、選択肢はさまざまです。
「助産師しかできない」と思い込まずに、視野を広げることで新たな可能性が見えてくることもあります。
看護師職に戻る
助産師免許を取得している人の多くは、看護師免許も保有しているため、比較的スムーズに転職が可能です。
外来や病棟、健診センターなど、より自分のライフスタイルに合った職場を選ぶことができます。
助産師としての経験は看護師としての業務でも強みとなり、現場での信頼も得やすいでしょう。
助産師資格を活かした専門性のある看護分野
産婦人科やNICU、不妊治療クリニックなど、女性の健康や出産に関わる分野では、助産師の経験が重宝されます。
現場の流れや患者対応に慣れていることで、即戦力として活躍できる可能性も高いです。
また、出産後の母親ケアを行う助産師外来などに再チャレンジする選択肢もあります。
教育・講師業に転身
経験豊富な助産師は、看護学校や助産師養成校の教員として採用されることもあります。
また、自治体主催の母親教室や地域講座などでの講師としても活躍可能です。
直接ケアを提供する立場から、知識や経験を伝える立場に変わることで、やりがいを見出せる人もいます。
地域支援センターや母親教室での講師
保健センターやNPO法人が実施する育児講座で、講師として登壇する助産師もいます。
現場の経験をベースに、妊婦さんや産後ママたちへ実践的な情報を届ける役割を果たせます。
直接的な医療行為を行わない分、体力的負担も少なく、育児との両立も可能になるケースが多いです。
医療・福祉系の異業種転職
病院やクリニック以外の分野でも、助産師の経験を活かせる職種はあります。
医療ライター、介護業界のスタッフ、カウンセラー、福祉関連のコーディネーターなどです。
人と向き合う仕事に対して柔軟に対応できる力は、他業種でも評価されるポイントです。
医療ライターやカウンセラー
医療知識を活かして記事を書く「医療ライター」は、専門性がある助産師に向いています。
また、育児や出産に関する知識を活かし、産後うつなどの悩みを聞くカウンセラーも選択肢です。
在宅で働ける仕事も多いため、ライフスタイルの変化に応じて柔軟な働き方が可能です。
全く異なる業界へ転職
医療とは無関係の職種に転職する人もいます。
一般事務、営業、接客、福祉・教育以外の分野にチャレンジすることで、新たな人生を歩むこともできます。
未経験でも受け入れ先が増えている今、自分の可能性を広げるチャンスと考えることもできるでしょう。
辞める前に検討すべきこと
「辞めたい」と感じたとき、勢いで退職するのではなく、事前に冷静な判断と準備が重要です。
金銭的な見通しや家族との協議、資格の活用方法などを整理しておくことで、後悔のない決断ができます。
以下では、辞める前に必ず確認しておきたいポイントを紹介します。
生活費・収入の見通し
退職後は収入が一時的に減少するため、生活費や貯蓄のバランスを見直す必要があります。
退職金や失業保険の給付条件、支給開始時期を事前に調べておきましょう。
数ヶ月間の無収入期間を想定して、生活防衛資金を確保することも大切です。
夫婦共働きの場合の家計シミュレーション
パートナーと生活費をどのように分担するか、家計に与える影響をシミュレーションしておくと安心です。
共働きであっても、片方が退職することで家計全体の余裕がなくなることがあります。
ファイナンシャルプランナーに相談して試算するのも一つの方法です。
家族やパートナーへの相談
辞めることで収入や生活リズムが変わるため、家族への相談は欠かせません。
事後報告ではトラブルになりかねないため、決断前にしっかりと話し合っておくことが重要です。
気持ちを理解してもらえるだけでも、辞めた後の安心感が大きく変わってきます。
資格の活かし方とキャリア相談
助産師資格は国家資格であり、看護師資格も合わせて保有していることが多いため、他の業種でも評価されやすいです。
辞めた後も資格を活かせる道を模索することで、新しい仕事に前向きに取り組むことができます。
転職エージェントやキャリアカウンセラーを活用するのも有効です。
看護師・保健師など他の国家資格の活用
保健師や看護師など、助産師と並行して取得している場合は、そちらを活かす選択肢もあります。
保健所や学校保健、企業の産業保健師など、体力的に比較的負担の少ない職場もあります。
また、助産師の専門性を補完するための追加資格取得を検討するのもよいでしょう。
助産師を辞めた人の体験談
実際に助産師を辞めた人の体験談は、悩んでいる人にとって非常に参考になります。
辞めたことで新たな人生を手に入れたケースもあれば、後悔や迷いを感じている人もいます。
どちらの立場からも学びがあり、自分の判断に活かすことができます。
辞めてよかったケース
辞めてから心身ともに健康を取り戻し、家庭との両立がしやすくなったという声があります。
また、やりがいを持てる新しい仕事に出会えたことで、以前よりも前向きに過ごしている人もいます。
「思い切って辞めてよかった」と語る元助産師は少なくありません。
自分の時間を取り戻せた
夜勤やオンコールから解放されたことで、体調が改善したという人は多いです。
趣味や家族との時間を持てるようになり、生活の質が向上したと実感しているケースもあります。
精神的な安定を得たことで、人間関係や体力の不安がなくなり、自信を取り戻したという声もあります。
辞めて後悔したケース
辞めた後に、思った以上に収入が減ったり、やりがいのある仕事が見つからなかったと感じる人もいます。
とくに、助産師としての強い使命感や誇りを持っていた人ほど、喪失感が大きくなりやすいです。
「もう一度現場に戻りたい」と考え始める元助産師も存在します。
転職後のやりがいの喪失
事務職や一般職に転職したものの、仕事に手応えがなく、物足りなさを感じる人がいます。
「誰かの命に関わる仕事だった」という実感が、日々のモチベーションを支えていたことに気づく人も少なくありません。
このような気持ちのギャップが、退職後の後悔につながるケースもあります。
助産師の辞め方と注意点
助産師を辞めると決めた場合、円満に退職し、トラブルを防ぐためには準備が必要です。
就業規則を確認したうえで、退職のタイミングや方法を慎重に選びましょう。
また、辞めた後にも必要な手続きがあるため、計画的に行動することが重要です。
円満退職のための準備
上司への報告は最低でも1ヶ月前、可能であれば2〜3ヶ月前には行うのが理想です。
人員調整や引継ぎの準備に十分な時間を確保できるようにしましょう。
感情的にならず、誠実な姿勢で退職の意思を伝えることで、退職後の人間関係も良好に保てます。
引継ぎ資料の準備
担当していた患者情報や業務マニュアルなどを整理し、引継ぎ書類を作成しておくことが大切です。
後任者が困らないよう配慮することで、感謝される退職につながります。
結果的に、自分自身が気持ちよく次のステップに進めるようになります。
退職手続きの流れ
まずは直属の上司に口頭で退職の意向を伝え、その後正式に退職届を提出します。
就業規則に沿った退職申請のルールを確認しておくことが重要です。
有給休暇の消化や、業務の終了時期との調整もあわせて進めていきましょう。
辞めた後に必要な手続き
退職後は、健康保険や年金、税金などの手続きが必要です。
離職票が届いたら、ハローワークでの手続きや、失業給付の申請を行いましょう。
社会保険から国民健康保険への切替や、年金種別の変更も忘れずに行う必要があります。
健康保険や住民税の手続き
退職後14日以内に市区町村役所での手続きが求められます。
また、住民税の納付方法も給与天引きから普通徴収に変更される場合があるため、確認が必要です。
これらの手続きを怠ると延滞金が発生する可能性もあるので、注意が必要です。
まとめ:助産師を辞めたいと感じたときは
助産師という仕事は尊い反面、大きなプレッシャーや負担を伴います。
辞めたいと思うことは決して悪いことではなく、むしろ自分の心身を大切にするための自然な感情です。
重要なのは、一時の感情で辞めるのではなく、今後の人生を見据えて冷静に判断することです。
十分な準備と情報収集を行い、自分にとってベストな道を選びましょう。